近視のこどもが急増してきた背景には、低年齢からのスマートフォンや携帯ゲームの長時間利用など、近距離を見つめる時間の増加といった生活環境の変化が指摘されており、近視を生活習慣病と捉えるようになってきております。
また、近年では従来の治療法(お薬や手術などによる治療)を前提として、食事療法やサプリメントなどの補完療法を組み合わせて行う「統合医療」の考え方が認知されてきました。
例えば、生活習慣病の1つである糖尿病での食事療法や、妊娠中の葉酸サプリメント摂取も補完療法の1つです。
近視進行抑制の補完療法として、生活習慣改善(屋外活動を2時間以上など)やサプリメントに有効な臨床研究データが確認されており、さらなる研究が期待されています。
近視人口の増加は世界的に(特にアジアで)注目されており、失明リスクに繋がる「強度近視」人口の増加が危惧されています。 研究において、近視に与える科学的根拠の高い事項として「屋外活動」が注目されています。
アメリカでは両親が近視でも近視でなくても、屋外活動が長ければ近視になりにくいデータ結果が発表され、またオーストラリアでは近業時間の長さにかかわらず、屋外活動が長ければ近視になりにくいデータ結果が発表されました。
これらの結果から、遺伝や環境要因にかかわらず、屋外活動が近視の進行を抑制する可能性が示唆されました。
屋外活動(外遊び)が近視を抑えるメカニズムの一つとして、太陽光に含まれる「バイオレットライト」が関与している可能性が近年発表されました。
バイオレットライトは波長360〜400nm領域の紫色の光で、太陽光に豊富に含まれているが、LEDや蛍光灯などの照明にはほとんど含まれておらず、ガラスをほとんど透過しないので、室内では浴びることができません。
その研究では、バイオレットライトを浴びることで、「EGR-1」という近視を抑制する遺伝子が活性化され、近視が起こりにくくなることがわかったため、バイオレットライトを活用した眼鏡などが近視進行の抑制に期待されております。
屋外活動(バイオレットライト)の他に、「クロセチン」が近視進行を抑制する遺伝子である「EGR-1」の発現を高める効果があることがその後の研究で確認されました。
「クロセチン」はクチナシの果実やサフランに含まれる「黄色の天然色素」で、ニンジンに含まれるβ-カロテンやトマトに含まれるリコピンなどと同じカロテノイドの一種です。
ヒトの眼では主に小児期に眼軸長の伸びがみられ、成長期が終わると眼軸長の伸びが止まるといわれていますが、過剰に眼軸長が伸長すると近視が進行します。
近視誘導モデル(マウス)に「クロセチン」を投与した結果、近視化の指標である「眼軸長の過剰伸長」並びに「屈折度数の変化」が抑制されることが確認されました。
さらに臨床研究では、6~12歳の小児にクロセチンを服用させ、近視が進みやすい小児期におけるクロセチンの近視進行抑制効果を検証した結果、眼軸長の伸長が14%抑制されるとともに、屈折度数の低下が20%抑制され、近視進行を有意に抑制する効果があることが確認されました。
当院でも研究結果と同量のクロセチンを配合したサプリメント「ロート クリアビジョン ジュニアEX」を導入しており、屋外活動(バイオレットライト)と同様の補完療法として、近視進行を抑える効果が期待されています。